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ファリスという男***15

 彼は病人の介護を心得ているらしい。唇にスープを当て、飲める程度なのを確認してからマライカの口の前に運ぶ。  心臓が煩い。とにかくスープを飲み込むことでさえ今のマライカにとって困難だ。自分で飲めると拒否したいのに、ファリスにこうも見つめられては抗うことさえできない。  口を開き、運ばれたスープを飲み込めば、鋭い双眸がすっと窄められた。 「良い子だ」  上がった口角はとても優しい雰囲気さえ醸し出す。  スープの味なんて判らない。  ――熱いのは顔だけじゃない。身体も、そして心も、すべてが蕩けてしまいそうだ。  そうしている間にもスープは一連の動作でマライカの口に運ばれ、飲み込む。  もう誤魔化せない。  観念したマライカは彼と視線を重ねた。そこには微笑の面影すらない。射貫くような強い眼差し。けれど、少しも恐怖はなく、熱を感じた。みぞおちが疼く。  マライカは後頭部に両腕を回し、艶やかな髪に指を差し入れた。彼もまた手にした皿とスプーンをテーブルに押しやるとマライカの顎を持ち上げた。二人はどちらからともなく、まるで目に見えない引力に引き寄せられるかのように唇が触れる。  触れるだけの優しい口づけは、やがて少しずつ強くなっていく……。  マライカが引き結んだ唇を解けば、彼の長い舌が侵入する。  彼の舌は巧みに動き、マライカの口内を蹂躙する。舌の先端を絡み取り、あるいは表面をなぞり、歯列を辿る。そうかと思えばマライカを塞ぐ唇が強く吸い付き、彼の舌は力強く動き回る。

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