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ファリスという男***18
下卑た存在。子を宿すことしかできない卑しいオメガ。
自分という存在がいかに醜いのかを思い出せば、狂おしい熱が消え、代わりに身体が冷えていく……。
「マライカ、泣かないでくれ。どうすればいいのか判らなくなる」
涙するマライカに、彼は苦しげな声でそう話した。
苦しいのはマライカであって、ファリスではない。
それなのに、彼はまるで自分が痛めつけられたかのようにマライカを胸に引き寄せ、抱きしめる。
背中を包み込む彼の腕の力強さは、まるで何もかもに守られているように感じてしまう。
ファリスとはいったいどういう男性なのだろうか。
ひどく傲慢な男かと思えば、次に出会った時には紳士に振る舞ってくる。
二度目の再会で自分を無理矢理組み敷いたように、ただ傲慢なだけだろうか。それとも初めて出会った時のように男たちの手から守ってくれた心優しい男性なのか。
――貴方の本当の姿が知りたい。
憎んでいたファリスにこんなに興味を抱く自分はどうかしている。
けれど、マライカがハイサムの頭ファリスに興味を抱く真意は知っていた。
自分はファリスに恋心を抱いている。
マライカにとってファリスは初恋の相手である以上に、また、彼に恋をしているのだ。
だから彼と再会した時、自分を無理矢理抱いたファリスを憎いとも思ったし、父親の積み荷を奪ったかもしれないことにひどく腹を立てた。
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