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変容***2

 自分が今以上に無力だと思い知らされた時はない。  もう二度と同じ過ちを繰り返したくはない。  大切な人を失うのはもう御免だ。  そこで、ファリスははっとした。  おかしな思考に至っていることに、彼自身気がついたからだ。 (俺は今、何を考えた?)  マライカを大切だと思った。家族同様、もしくは家族以上に大切だと、そう思わなかっただろうか? 「そんな、ばかな」  いくら彼が子を宿すことができるオメガであるとしても、同性には変わりない。その彼を愛しているとでもいうのか。  たしかに、マライカにはファリスの保護欲をくすぐるところがある。しかしそれは、ターヘルのように弱い立場に置かれた子供だと思ったからで、けっして愛ではない――筈だ。  ならば自分がターヘルを抱くかといえば、答えはノーだ。  ターヘルは守るべき存在であって自分と対等の立場ではない。それならマライカはどうかといえば、ファリスは彼をひと目見た時、たしかに保護すべき人間だとは理解した。しかしダールに嫁ぐと知った二度目の再会ではどうかといえば、嫌がる彼を無理に抱き、身体がまだ無垢なままだったことに内心ほっとしていなかっただろうか。自分が彼の初めての相手であると知り、少なからずとも嬉しく思ったのは確かだ。 (俺はマライカを――……)  そこまで考えた時だった。慌ただしい靴音と共に、人影が駆けてくるのが見えた。 「ファリス様! ああ、よかった。こちらにいらっしゃいましたか」

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