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変容***5
「どこまでも腐りきった奴だ」
あれが自分と同じアルファの性であると思うと忌々しいばかりだ。
ファリスにとってダールは復讐の相手。たとえ自分に何が起きたとしても、ダールだけは仕留めるつもりだ。そうなれば、晴れてマライカは自由の身だ。何者にも捕らわれず、好いた相手と一緒になればいい。そうして自分ではない相手と所帯を持ち、子を育んで幸せに暮らせばいい。――胸が痛むのは気のせいだ。
ファリスはあらぬ方向へ思考が向かっているのに気づき、考えを締め出した。
とにかく、これで奴の息の根を止められる。
ファリスは首を振ると足早に自分の部屋へと向かった。
《変容・完》
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