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もう二度と。***3

「よく言うぜ。お前、言うほど金持ってねぇじゃん」 「違いねぇ」 「ひっでぇ! しっかし、王もやっとハイサムの身柄拘束に乗り切ったってのはでかい決断だったな……」  ――ハイサム。今度こそ間違いなく聞こえた会話の中の単語に、マライカは我を忘れて3人組がいるテーブルに駆け寄った。 「ハイサムが捕まったってどういうことですか?」  3人の客が囲んでいたテーブルに突然割って入った給仕係の剣幕に圧され、その内のひとりが口を開いた。 「え、ああ。今から2ヶ月前だったか?  大富豪ダールが犯罪者をスーリー砂漠に集めた事件でよ、王宮の兵士とやり合ったらしくてな。ダールが脅迫と殺人未遂で捕まって、なんでもその4日後にはハイサムの頭領も捕まったって話だ」 「王宮は明後日にハイサムの頭領を公開処刑するらしい」 (ファリスが宮殿に捕らえられた?)  ――2ヶ月前といえば、たしかマライカがダールに拘束された時あたりだ。ファリスに助けられ、彼と離れて僅か4日後に王宮に捕らえられた。しかも明後日には処刑されるだなんていったい誰が信じるというのか。  3人の客が話した内容は俄に信じられるものではない。だって王宮に召し抱えられている父セオムはファリスの――マライカのお腹に宿っている子供の父親について、ひと言も口にしなかった。  初めて聞く内容に、マライカはただただ狼狽えた。 (ファリスが、処刑……) 「……そんな。嘘だ……」  誰に言うでもなく、ぽつりと口にした声が震える。

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