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もう二度と。***5

 湿り気ひとつない小さな砂地がマライカの足に纏わりつく。どこからともなく吹く風が地表に覆う砂を攫い、マライカに向かって吹き荒ぶ。柔らかな砂地はマライカが進むごとに足を呑み込み行く手を阻んだ。 (行かなきゃ) (ファリスに会わなきゃ) (ファリスを助けなきゃ……)  マライカの思考はすっかり停止している。  ファリスに会うことのみをインプットされた機械のように、ただただ足を動かし続ける。 「マライカ!」  誰かがマライカの名を呼んでいる。けれど今のマライカにはその声が誰によるものなのかなんてどうでも良かった。マライカは構わず砂漠の中を進む。 「マライカ!」  細い腕が先急ぐマライカの腰に回る。  マライカが見下ろせば、自分と同じ髪色をした母親メイファがしがみついている。 「母、さん……ファリスが、ファリスが……」  メイファの憂いを帯びた目を見たマライカは立つ力さえ失い、崩れた。  目尻に溜まった涙は堰を切って溢れ出し、視界を塞ぐ。  胸にぽっかりと穴があいたような感覚。  身を引き裂くような深い絶望がマライカを覆う。  声を失おうとかまわない。  喉が潰れてもかまわない。  砂塵が舞う中、マライカは愛おしい彼を想い、泣き叫ぶ。 《もう二度と・完》

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