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ぼくのすべてを貴方に。***1

 ⅡⅩ 「約束の刻限になっても戻らないと思ってみれば。わたしたちがどれだけ心配したのかわかってるのか!」  砂漠で蹲り、泣きじゃくったマライカは、両親に連れられて帰宅した。ダイニングに腰を下ろすマライカの前に仁王立ちするセオムは怒りをぶつけた。 「セオムも私も、貴方がお仕事先から戻らないから、貴方の身に何かあったのではないかと心配してずっと探していたのよ? 貴方はオメガ。いくら身籠もったから発情期がないとはいえ、万が一ということもあるでしょう?」  母のメイファはマライカの無事な姿に安堵したのか涙を浮かべ、夫セオムが腹を立てている理由を静かに説明した。  両親に心配をかけたのは悪いと思っている。しかし今のマライカにとって、自分の立場とか、両親が憤怒している理由とか、そんなことはどうでもよかった。それよりもずっと気がかりなことがある。マライカの心を大きく占めていたのはファリスが処刑されることばかりだった。  マライカにとって――いや、お腹にいる子供にとってもファリスは大切な、かけがえのない男性なのだ。 「……なぜ、砂漠なんかにいたんだ。お前一人の身体じゃないことくらい判っているだろう? そもそもその身体で働くこと自体が反対だったんだ」  心ここにあらずといったふうのマライカを見下ろすセオムは、あからさまに大きなため息をつき、訊ねた。  しかし、マライカはいい加減うんざりだった。こうしている今だってつわりは治まるどころか酷くなるばかりでひっきりなしにあるし、おかげで夜もろくに眠れていない。加えてファリスのことを考えれば感情は乱れる。しかも、ファリスは3日後に処刑されるという。そんな状況でどうやって冷静に父親と話せるというのだろう。

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