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ぼくのすべてを貴方に。***3

「ファリスはぼくをダールから助けてくれた人だ!」  ダールに捕らわれたあの時、ファリスが来てくれなければ、自分は今頃狼に殺されていたか、狼の子を孕んでいたかのどちらかだった。  マライカが噛みつけば――。 「だからといって、盗賊には変わりないだろう!! それにこれまで何十、いや何百という人の金子を奪ってきた。ダールに雇われたとはいえ、わたしの積み荷を奪った盗賊と何ら変わりはない。――いや、そんなことはどうだっていい。わたしもお前に頼って資金をどうにかしようとした。ダールに嫁がせる決断をしたのわたしも同罪だ。お前に恨まれても仕方のないことだと思っている。――わたしが一番許せないのは、奴がお前を身重の姿にして去ったことだ!」  セオムは間違いなく、息子をダールへの生け贄のように嫁がせようとしたことを責めていた。そして、マライカを置いて去ったファリスと自分とを重ねたことで、さらに罪悪感が増しているのだ。 「父さん……! ハイサムは疫病にかかって働けない民を救うためにしたことだ。お金に困っている人からは盗んでいないよ! そもそもハイサムは9年前の死の病に罹った人を救うために結成されたんだ。ファリスは元々は王の兵士だった人だよ! ジェルザレード山脈麓の民の話は王宮に出入りしている父さんなら知っているでしょう? それに、ファリスはぼくが身籠もったことを知らないんだ。だから彼がぼくから去ったのは仕方がないこと――」 「盗人は盗人。第一、牢破りなんて大罪を犯さなくても死の病を患った人々を助ける方法は他にもあった筈だ……」  マライカの言葉に被せ、セオムは声を荒げた。  しかしマライカも引っ込んではいられない。なにせファリスの命は残り3日――いや、あと2日しかない。

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