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ぼくのすべてを貴方に。***4
マライカが壁掛け時計を見れば、時刻は深夜0時を過ぎていた。残り僅か2日で、自分はいったい何ができるのだろう。事は一刻を争う。早くファリスを助けなければならない。その為には、父親に縋るしか方法がなかった。
マライカはファリスのように盗みや剣技もない。そして母メイファのように裁縫や料理も得意ではなかった。ただあるのは、オメガという、子を孕むことに長けているだけ――。今ほど自分がいかに役立たずであるかを痛感したことはなかった。
しかし、セオムは違う。彼は王宮に出入りする商人で、ワーリー王にもいくらかお目通りした時もあった。だったら、頼みの綱は父親だ。
どうにかしてワーリー王に会い、ファリスの処刑を止めるよう、かけあうしかないのだ。
「病を患った人たちの命を救うにはあまりにも時間が足りなかったんだよ! 彼らを助けるにはそれが最短の方法だったんだ。父さん、ぼくはファリスを助けたい。お願いです、王に会わせて。お腹の子の父親を助けたいんだ。――後生ですから……」
マライカはセオムの裾を掴み、膝を折り、懇願した。
「お前は……」
「貴方、私からもお願いします。この子の思いをどうか汲み取ってあげて」
メイファはセオムに寄り添い、彼の手の甲をそっと叩いた。彼女はいつだってマライカの良き相談相手であり、一番の理解者だ。母親の存在を心強く思ったのは今だけではない。
「……お前。そこまでしてその男のことを――」
しばらく黙るセオムだが、決意したように息を吸い込み、頷いた。
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