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仕組まれた出会いと策略。***9

「そして身籠もった儂の子を売り、希少種が孕んだ子供として金儲けを考えておった……それなのにお前は――!」  ダールはマライカを見下ろした。顔は真っ赤になっていてその目は血走り、憤慨しているのが判る。それと同時にマライカを踏みつける足もまた強くのめり込む。 「しかしその盗賊の命運も今や風前の灯火。いずれ消え去るのも時間の問題よ。あの集落へは儂が大枚を叩いて雇った政府さえも手を焼くほどの腕利きの殺し屋どもを向かわせた。邪魔者が消え去った後の奴らのアジトも儂の縄張りよ」  両親も、ハイサムも集落の民も――。自分が関わったすべての人間が不幸に見舞われてしまう。  マライカは自分のオメガという性に生まれた自身を呪った。  本当に人間のすることだろうか。  血も涙もないダールは悪魔そのものだ。恐怖が込み上げてくる。 「こいつも地下牢に閉じ込めろ!」  ダールは後ろで見物していたヴァイダに命じたが少し考え直し、動きを止めた。 「――いや、待て。たしか競り上げた人食い狼がおったな。ヴァイダ、アジトから儂の屋敷までかかった時間はどれくらいだ」 「1時間でございます」 「こいつがヒートの抑制剤を飲んだのは何時間前だ?」 「2時間前かと思われます」  ヴァイダは苦痛に歪むマライカから主へと視線を移し、答えた。 「抑制剤の持続時間は5時間。となれば、薬の効果が確実に切れるには残り約3時間程度、か」  ダールは顎髭を触り、何やら目算すると満悦気味に目を窄めた。

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