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囚われの身***6
恨みが隠ったマライカの歯は男の指の肉を裂く。赤い鮮血が伝い、一筋の線を作って美しい彩りをした絨毯を染め上げていく……。
「ファリス様! 貴様っ!!」
頭を傷つけられた部下たちは激怒し、マライカの身体をいっそう地面に押しつける。同時に苦痛の声が漏れ、男の指を解放してしまった。
一人がマライカの肩に全ての体重を乗せて強く踏み込む。
強い力でねじ伏せられたマライカの身体は重みを増し、激しい痛みに襲われながら地面に擦りつけられた。
今やマライカの身体は雁字搦めにされて平伏している。しかし彼らはそれだけでは終わらないとばかりに、ジャンビーアの鋭い切っ先を目の前に突きつけた。
(……殺される)
奥歯をきつく噛み締めて望まぬ死を覚悟するマライカに、しかしハイサムの頭ファリスは声を上げて制した。
同時に華奢な身体に掛けられていた体重が取り除かれる。しかしまだ鋭い切っ先はマライカの首の前に突き立てられたままだ。
部下の一人が被っていたベールごとマライカの髪を強く引っ張り上げた。
髪を引っ張られた頭皮は頭痛を伴わせて強烈な痛みを生み出す。
激しい憎悪と屈辱に支配されているマライカの目は痛みで涙を浮かべてしまう。それでもこの男に屈してはならないと、指を傷つけられてもなお、顔色ひとつ変えない盗賊の頭、ファリスを睨み続ける。
ファリスはマライカの姿を愉しんでか、唇をひん曲げて笑うばかりだ。
果たしてこの笑みの下に隠された感情は何だろう。
嫌悪、怒り。それとも憎悪か……。
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