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囚われの身***7

 まるでジャンビーアの切っ先にも似た鋭い視線をそのままに、口元だけが弧を描く。  彼は憎悪の念を抱くダールに嫁ぐ愚かなオメガ(自分)をそこまで(あざけ)っているのだろうか。  その表情がまた、マライカを恐怖へと駆り立てる。  悪魔と対峙しているような気分だ。 「面白い。初めて会った時は大人しいだけかと思ったが、気の強いところもあるのか……。支配欲の強いダールが欲するのも頷ける」 「ファリス様! このような愚か者は人質にさえも価しません! ダールへの身代金要求のための人質は他を探しましょう!」  部下の一人が声を荒げ、マライカを始末しようと意見する。しかし、彼は手を掲げ、部下を制するに留めた。 「……いや、ダールは大のコレクターだ。発情期のオメガはどの性でも子を宿すことができる。その希少価値は恐ろしく高い生き物。これ以上の人質は無い」  そこまで言うと、ファリスはしゃがみ込み、地面に這い蹲っているマライカの顎を掬い取る。 「ダールは大富豪。金に目が眩んだか? ……それとも、ダールに快楽を教え込まれたか?」  ファリスの表情は影を帯び、感情を読み取ることができない。誰に言うでもなく呟いた後半の言葉はマライカには聞き取れなかった。 「ファリス様?」 「お前たちは下がれ」  軽蔑が隠った鋭い目をマライカから放すことなく彼は従者らに命じる。 「し、しかし!」  いくら頭の命令とはいえ、反抗的な人質とふたりきりにさせて頭に万が一のことがあってはならないと、部下たちは異論を唱える。

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