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囚われの身***8

 それでもファリスの恐ろしい表情に、彼らは恐怖さえも感じた。鋭い視線だけでも射殺せてしまいそうな雰囲気を醸し出す。  すっかり頭に怯えた部下たちは一礼するなり足早に去って行く。  今やマライカを取り押さえる輩は誰もいない。自由になった筈なのに、ファリスの鋭い視線に貫かれ、金縛りにあったかのように動けない。視線が重なれば、さらなる恐怖が押し寄せてくる。 「欲に溺れたオメガよ、ダールとの情交がそんなに悦かったのか?」  ファリスがそう口にするなり、突如マライカの視界が変化した。  マライカは顔面が蒼白し、紅色だった唇は血の気が引いていく……。 「お前も判っているんだろう? 奴に嫁いだ先の行く末くらいは――」  恐怖ですっかり戦意を喪失しているマライカを尻目に、彼は細い両腕を意図も容易く片手でまとめ上げ、頭上に固定させた。  それから空いている手と唇の中に隠してあった鋭い歯を剥き出しにして漆黒のアバヤを引き千切る。布が無惨に引き裂かれる音がマライカをさらなる恐怖に陥れる。  同時に肩までに切りそろえられた艶やかな黒髪とベールが床に散らばる。エメラルドグリーンの衣服を上下に身を包んだ華奢な腰が露わになった。 「お前の望みは何だ? 昼夜問わず肌を(さら)し続け、あの男が飽くまで子を孕み続けることか?」  マライカはファリスから逃げようと身体を捻るが、体格差がありすぎた。細身である自分が逃れられる筈もない。合間にも彼は何かを口走っているが、必死に抵抗を図るマライカには当然聞き取る余裕はない。

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