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明けない夜***4

 けれども本当のところではきちんと理解していなかった。  世間ではオメガの扱いが酷くても、もしかしたら両親のように、自分を愛してくれる人がいるのではないかと心の片隅に淡い期待を抱いていた。  これから自分の夫となる、父親と同年代のダールだってそうだ。たとえあるべき愛の形が違っていたとしても、マライカを大切にしてくれるのではないかと思っていた。  でも実際は――。  ダールは大富豪である以上に、コレクターであるということも耳にしている。彼だってきっとマライカを玩具として扱うのだろうし、誰だって自分が一番可愛い。自身のことしか頭にないだろう。  所詮はオメガ。どこにいても、マライカは地面を這って生きていかねばならないのだ。  自分の運命を理解すると、身体は鉛のようだ。とてつもなく重く感じる。それとは逆に、どうしたことか、身体の重みで沈んでいたベッドがほんの少し浮いた。  間もなくして遠くの方でドアが閉まる音が聞こえた。恐る恐る目を明けると、そこには誰もおらず、ただオレンジ色の薄明かりが室内を照らすばかりだった。真っ青になったマライカが余程醜い生き物に見え、興醒めしたのかもしれない。  今はどうにか抱かれずに済んだ。けれども一時間後、どうなるのかなんて判らない。また、無理矢理組み敷かれるかもしれない。  そうして誰との間に孕んだのか判らない子を身籠もり、精のはけ口にされて捨てられ、朽ちていくのだ。  マライカの結末は決められているとしても、自分はいったい、どうすればいいのだろう。

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