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明けない夜***5

 本来嫁ぐべきだったダールではない相手に操を奪われてしまった。もし、このことがダールに知られてしまえば最後、彼の怒りを買ってしまう恐れがある。彼の手にかかるのが自分であればいい。けれども、もし、両親の身が危ぶまれるようなことにでもなれば――。  そもそも親孝行のためにダールへ嫁ぐ決意をしたのに、これでは本末転倒ではないか。  ハイサムに攫われ、さらには身代金さえも要求されてしまえばどうなるだろう。  そもそもダールが身代金を支払ってまでまだマライカに執着するだろうか。答えは否だ。ただでさえ、父親の借金を肩代わりしたのに、さらに身代金さえも支払う筈がない。それならば、新たなオメガを探し当て、娶る方がずっと効率的だ。なにせ、マライカを攫ったのは極悪非道な大盗賊、ハイサム。彼らに囚われ、たとえマライカを取り戻したとしても全てが無事だとはダール本人もきっと思わない。  彼はマライカが無垢であるが故に、気に入ったに違いないのだ。全ては、男とはどういう生き物で、快楽とは何か。ダールが悦ぶ行為の全てをマライカに教え込み、彼の性奴隷となるために。  だとすれば、ファリスたちがマライカの身代金を要求した同時期に両親の命という灯火もまた、消えてしまう可能性が高い。 (ああ、どうしよう)  自分はなんということをしでかしてしまったのだろう。   「ごめん、なさい……父さん、母さん……」  両親を助けるための結婚だったのに、まさか命を奪う側に回ってしまうなんて……。

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