男性なら普段は眠っている筈の子宮が女性性のホルモンの傾きによって開花。さらには脳から分泌するオメガ特有の誘惑フェロモンを出し、自ら溜まった性的欲求を満たそうとするのだ。 　――ともすれば、アドレナリンを抑えることで問題は解決する。実際、ヒート時に服用する薬はもうすでに開発されている。 　しかし、生憎あれはとても高価なもので、容易に手に入る品物ではなかった。 　当然、一般階級のベータを両親にもつマライカがその薬を所持しているわけがない。 　果たして自分はどうなってしまうのだろうか。 　今夜から約1週間の間、生まれて初めてのオメガ特有の生理現象を、この何も知らない場所で、たったひとりで対処しなければならないのだ。 　不安がマライカを襲う。 　ベッドの上で蹲り、マライカは押し寄せてくる熱に耐える。けれどもマライカを襲う熱は徐々に上がり、心臓が激しく鼓動する。とうとう耐えきれず、噛み締めた唇から苦しみ喘ぐ声が漏れてしまった。 「マライカさま？　どうなさいました？」 　マライカのあまりの苦しみように危機を感じたターヘルは顔面蒼白になっていた。 　彼は純粋な子だ。まだ希少種のオメガという穢らわしい生き物がこの世に存在していることさえも知らない。 「マライカさま、マライカさま！！　具合が悪いんですか？　ど、どうしよう」 「だいじょうぶ……だから……ひとりになりたいんだ……」 　オメガは誰であっても性的欲求を満たすまで他者を誘惑し続ける。 　いかに純粋なターヘルが相手でも例外ではない。