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heat***5

 まるで永遠に続く針山の上を歩かされているようだ。  身体中の毛穴からは汗が吹き出ている。  こうして自分は見境無く誰彼構わず誘惑して子を宿すのだ。  オメガとは、なんという醜い生き物だろう。  悲しくて、苦しくて、涙が止めどなく溢れてくる。  けれどこの涙は本当にそれだけだろうか。性的欲望を待ち望む官能の涙ではないのか。  熱に侵されるマライカの脳裏に恐ろしい下卑た疑問が過ぎる。  しかしいくらそうではないと言い聞かせても、現に今、マライカの肉壁は楔を欲して収縮を繰り返している。普段は濡れる筈のない箇所からでさえも蜜が流れ、厭らしく太腿を濡らしている始末だ。腰を揺らし、熱い楔の解放を待ち望む。  自分の全てが穢らわしく思えてくる。  こういう時にこそ、ターヘルの純粋な優しさが仇になる。自分の元から去ってほしいと願うマライカとは裏腹に、ターヘルはなかなか出て行く気配がない。 「おねが……も……」  もう相手が誰だって構わない。  この熱をどうにかして欲しい。  そして、最奥深くを貫かれ、揺さぶられてひとつに溶けたい。  ただそれだけを願い、はしたない声を上げて求めないよう、懸命に唇を引き結ぶ。 「マライカさまっ! 誰か! 誰か助けて!! マライカさまが、マライカさまがっ!!」  ターヘルは大粒の涙を零し、必死になって外へ助けを求めた。  その時だ。ターヘルのただならぬ叫び声にやって来た人物がいた。ここ最近になってからすっかり顔を出さなくなった彼、ファリスだ。

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