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潜入。***3

「やはり無事だったか」 「当然だ」  ファリスの言葉に、当初連絡係から受けた裏切りの行為を思い出したのか、ムジーブは不服そうに鼻を鳴らし答えた。 「ここ最近、ヴァイダがどうも忙しない動きをしていたから不信に思っていたんだ。すると案の定、奴は毒薬を酒に仕込みやがった。こちらとしてもあっちを欺く好都合だったから、死んだと思わせることにしたんだ」 「死体のフリをしたムジーブさまたちはヴァイダに簀巻きにされて川に流され、どうにか切り抜けられたそうです」  ターヘルはまるでヒーローを讃えるかのように、「やっぱりムジーブさまは凄いです!」と鼻孔を大きく膨らませ、興奮気味に答えた。 「それで? これからどうするつもりだ?」 「マライカが捕らわれた」 「ほう?」  ムジーブは片方の眉をひくつかせた。ファリスの視線が揺れている。  ムジーブは、我が頭領がひどく動揺していることに気づいていた。そして同時に彼の目には強い意思も宿っていることにも気づいていた。そして彼は、ファリスに宿る意思が何によるものであるかも理解していた。  マライカ・オブレウス。ファリスが人質として捕らえた当初に彼を必要以上に拘束しなかったのもすべては彼の心に宿っているそれが原因だった。  ファリスはマライカとの出会いによって大きく変化した。  それというのも、マライカと出会う前のファリスは、もっと強引で俊敏に事を進めていた。自分の命をなげうつような、無防備な策を考えることも少なくはなかった。

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