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脱出***3
たとえ自分が無事ですまないとしても、自分のせいで誰かが苦しむのはまっぴらだ。
一刻も早くここから抜け出し、ダールにこの身を差し出さねばならない。
しかし――。
「だけどここは迷路のようになっているんだ。ぼくではどうすることもできない。それに見張りたちもいる。今のぼくじゃ、逃げられそうにない」
「ご安心ください。わたしはここの道を十分に理解しております。彼らに悟られない抜け道も知っています。さあ、急ぎましょう」
「いけません、マライカさま!」
「ごめんね、ターヘル。どうしても父と母を助けたいんだ」
ヒートを迎えてまだ4日。残り3日はある。その間、ダールに会うまでは誰も誘惑してはならない。
マライカは無造作に置いてあったヒートを抑える薬をポケットに入れ込むとターヘルが止めるのも聞かず、マライカは青年の手を取った。
「マライカさまっ!」
背後からターヘルの声がする。しかし今のマライカにはターヘルの言葉を聞き入れる余裕はなかった。
両親の拘束を解いて貰わねばならないのだ。
気のせいだろうか。以前、逃亡しようとしていた時よりもハイサムの人数が少しばかり少ない気がする。
そういえば、ターヘルは先ほど、『ファリスさまが戻って来るのを待ってから……』と言っていた。どうやらここの主人は留守にしているらしい。ダールに何か動きがあったことと関係しているのだろうか。
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