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罠***6
盗賊ハイサムが元兵士だとはいえ、ダールもそれを見越して集めたのだろう。敵もそれなりに手強い。
我先にと言わんばかりに走り込んでくる男たちの顔触れには見覚えがある。盗みのためなら相手の命さえ奪う残忍な盗賊の頭、ベリオルやダーカーもいる。彼らは政府に恐れを知らない命知らずな奴らばかりだった。
さらに厄介なのは、ファリスが用意したハイサムの数よりも倍以上いるということだ。気を抜けば命を落とす。しかしそれにも増して危険なのは、頭であるファリスの心情だった。
彼が焦れば焦るほど、剣の腕が鈍る。
――いったい何人の敵を薙ぎ倒した後だろう。相手の剣技に翻弄され、ついに落馬してしまった。
「ハイサムのファリス、俺が首を取る!」
地響きにも似た低い声が言うが早いか、相手の切っ先がファリスの首と胴を真っ二つに引き裂かんがため、空を舞う。
その時だ。切っ先は突然弾き飛び、ファリスを引き裂く筈だった相手が崩れ落ちた。
「ファリス、暫く会わない間に腕が鈍ったか?」
静かな声音だった。見上げれば、漆黒色をした大きな馬が一頭、目前に立ち嘶いた。
その馬に乗っている男はファリスを見下している。
男の年ならファリスと同年齢くらい。波打つ漆黒の髪に均衡が整った目鼻立ち。利発そうな姿は威厳と清潔感があった。
この男には見覚えがある。
「お前は!」
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