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仕組まれた出会いと策略。***1

 ⅩⅢ  漆黒が広がる世界から、脳は一気に覚醒を果たす。  マライカは目を開けると、そこは無機質な白ばかりの間だった。天井から壁、天蓋付きのベッドまでが、とにかくすべてが白で覆い尽くされている。だからこの空間はけっしてジェルザレート山脈麓にある|若き鷲《ハイサム》のアジトではないと瞬時に理解した。 「やっとお目覚めかね」  突然、聞き慣れない野太い声が利き手の方からして身体を起こせば、そこには小太りの男が立っていて、マライカを見下ろしていた。  マライカにとって、男は初めて見る顔だった。年齢は50代後半くらいだろうか。身長はマライカよりもほんの少し高めだが、けっして長身とは言い難い。彫りの深い顔、分厚い濃い眉に顎髭。カンドゥーラに身を包んだ男は絹のデザートローブを纏っている。見るからに上流階級の服装だ。 「マライカ……初めまして、だったかな?」  そう口にした男の口元は弧を描いているものの目は笑っておらず、赤黒い顔は怒りを含んでいるように見えた。差し出された脂ぎった手は生理的に受け付けない。マライカは男の手を借りずに地面に素足を乗せた。ひんやりとした大理石の床がマライカの爪先から全身に渡って冷たくさせる。  上流階級の見たこともない男。しかし、それだけで男が何者であるかを理解するには十分だった。緊張が一気に襲う。 「まさか……」  マライカは口内に溜まった唾を飲み込んだ。 「そのまさかだよ。儂がお前の夫、ダール本人だ」

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