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仕組まれた出会いと策略。***3

 いったい何度叩かれただろうか。マライカの身体がふたたび地面に投げつけられた。その拍子にパンツのポケットからふた粒の錠剤が無造作に転がった。  その錠剤は言わずと知れた、ヒートを抑えるための薬である。マライカの顔がさらに青ざめた。ほぼ反射的に錠剤を掴んだ手が、彼の足に踏みつけられる。 「マライカ……」  ダールの声がマライカを震え上がらせる。さらに夫を怒らせたマライカは奥歯を噛みしめた。彼の靴がマライカの手をじりじりと踏みつけ、重心が加えられるたびに骨が軋みを上げる。これは夫ならば当然の感情である。よりによって敵に抱かれたマライカは父の命の恩人である夫を裏切ったのだ。苦痛の痛みに耐えなければならなかった。 「この薬は何だ……ヒートになっているというのか! 誰だ、誰がお前を抱いた! 答えろマライカ!!」  ますます低い声を鳴らし、マライカに問うたが、当然マライカは答えられる筈もない。無言のまま歯を噛みしめる。 「この、愚か者が! よりにもよってハイサムのアジトで発情しやがって! これだからオメガはクズだと言うんだ! ヴァイダ! ヴァイダ!!」  ダールは大声で男の名を呼んだ。その声に慌ててやって来る人物に、マライカは目を見開いた。彼はハイサムの連絡係の青年だった。  そこで思い出したのは、この男から告げられた、両親がダールによって拘束されたという言葉だった。そしてその言葉をきっかけにしてハイサムのアジトを離れたのだ。

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