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仕組まれた出会いと策略。***7
『盗賊を雇い、積み荷を奪わせた』
ダールはたしかにそう言った。
それはマライカが予期していなかった内容だった。
――いや、そうではない。ターヘルからダールという人物像を耳にした直後には、もしかしたらとそういう現実が脳裏に過ぎったこともあった。
だからだろう。本来ならパニックを起こし、泣き叫ぶ筈の内容に、冷静に対処している自分がいる。
ああ、なんということだろう。
まさかと思っていたことが現実に起きていたなんて……。
マライカはダールを視界から追い出すべく、強く目を閉じた。
ダールは自分を手に入れるために父親が用意した積み荷を襲わせ、借金の肩代わりを申し出ると自分たちに恩を売った。その事実がマライカの身体を冷たく凍らせていく……。
閉じた目をゆっくりと開ければ、マライカの打ちのめされた反応に気を良くしたダールが口を歪めて笑っていた。
その笑みは、マライカが今まで一度だって見たことのない、とても醜いものだった。
気をよくしたダールは口を開き、話を続ける。
「盗賊を雇い、お前の父親の積み荷を奪わせるよう仕組んだのはこの儂だよ、マライカ。すべては同性でも孕ませることができる、この世で最も希少種のオメガを飼い慣らすためだった。それなのに……なんだ、この有様は!! ハイサムなんぞに捕らわれ、挙げ句にはヒートになって処女まで奪われおって! 儂がお前を慣らし、快楽の傀儡にしようと思うたに!!」
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