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潜入。***1
ファリスにとって、たとえ凄腕の兵士がいる王宮であっても、どんなに警備が厳重な宮殿であっても、忍び込むのは容易いものだった。ただ殺気を消し、敵の衣服をいただきさえすれば、後は持ち前の軽い身のこなしでどうにかなるのだ。
そういうことで、ファリスは万が一にでもヘサームたち王宮の兵士が取りこぼした殺し屋たちがアジトに攻め入って来たとしても迎撃できる体勢をつくるため半数以上の部下を戻し、残りの15人ほどでダールの屋敷にやって来ていた。
それでも敵地に潜入するにはあらゆるリスクを伴う。人数は多くてもかえって足手纏いになるケースが殆どだ。
まずはダールに盗賊 が乗り込んで来たと知られないよう動く必要があった。
ダールのことだ。宮殿の警備も厳重であることには違いない。万が一のためにもマライカ一家を連れてすぐ逃げられるよう門の外に|馬 を配置し、5人ほど見張りに付けた。ファリスは部下9名ほどので屋敷内に侵入することに成功していた。
――とはいえ、宮殿とはこうも静かなものだっただろうか。
まるで嵐の前の静けさだ。ここには人の出入りも見張りも殆ど見当たらなかった。
しかしダールが厳選したであろう数え切れないほどのならず者や殺し屋たちがハイサムのアジトの集落を奪おうと馬を走らせ、ヘサームと刃を交えている。ダールとて、まさか王宮の兵士がファリス側についてくれていることは知る筈もないだろう。
ならば、奴は勝ち戦だと思い込み、警備もそっちのけで自分の兵士の殆どをハイサムへ攻め込む側に送り込んだ可能性が高い。
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