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潜入。***8

「俺は大盗賊で政府から煙たがられているが、どうやら奴らにとって、俺たち以上に厄介な奴がいたらしい」 「ファリス!」  ムジーブの声に硝子越しから下を覗き込んだ。  飛び込んできた光景にファリスは目を疑った。今にも飛びかかりそうな大きな狼が一匹、マライカと対峙しているではないか。 「無駄だ、来るのが遅かったな。あれは時期にふたつの選択を迫られる。狼の餌になるか、交尾をして子を成すか。どちらに選ばれてもどのみち地獄だがな」  今度はダールがほくそ笑む番だった。その言葉に、マライカの両親は泣き叫び、絶望から膝をつく。 「くそっ、マライカ!」  ファリスは何も考えられなかった。ただ目の前にあるマライカと自分を遮る硝子が憎々しい。マライカを救い出すことだけが頭の中を占める。  ファリスはジャンビーアの柄で勢いよく叩き割ると、飛び散る硝子と共に地上へ飛び降りた。そして勢いよく襲いかかる狼の行く手をその身で阻んだ。 《潜入・完》

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