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再会と別れ。***1

 ⅩⅥ  ぎゃんっと鳴く声がすぐ間近から聞こえ、それから狼が走り去っていく足音と鉄格子が締まる音がした。  ヒートの熱に侵されているおかげですっかり正気を失っているのかもしれない。それでも緊張感が消え、辺りは静けさに包まれているのは気のせいだろうか。  マライカが閉じた瞼を恐る恐る目を開けると、そこにはマライカが会いたいと願って止まない彼がいた。 「マライカ、無事か?」 「ファ、リス……」 (うそ。どうしてここにいるの?)  泣き疲れてろくに出ない声は掠れている。妙に現実味を帯びているこれはしかし、きっと幻想に違いないのだ。だってファリスは今、スーリー砂漠で待ち構えているダールが雇った数え切れない殺し屋たちと戦闘中なのだ。その彼が自分のすぐ目の前にいるなんてどう考えてもおかしい。  きっと今の自分は狼に侵されていて、現実逃避をしたくて狼を彼に変えているだけなのだ。 (――だけど) (――それでも……)  またファリスに出会えたのだ。たとえ幻想であったとしても、マライカは嬉しかった。  マライカは、これが幻想でもかまわないと、ファリスに触れるために腕を動かせば、鎖で繋がれ身動きが取れない四肢が目に入った。  そこでマライカは我に返り、歯を食いしばって俯いた。いくら目の前にいるファリスが幻想とはいえ、今の自分の姿はあまりにも酷い有様だ。上半身は切り傷や裂けた傷、青痣の打ち身などが目立つ薄汚れている。できれば初恋の人に、見窄らしい姿を見られたくはなかった。

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