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再会と別れ。***3
力強い腕がマライカを包み込む。同時にマライカの唇が塞がれた。呼吸ができなくてうっすらと目を開ければ、目の前に恋した男性がいる。ファリスに口づけられていると実感すれば、マライカの頭はもうファリス以外何も考えられなくなった。両腕を彼の広い背に回し、マライカも負けじと彼との口づけを交える。深くなる口づけにふたりは酔い痴れる。背中に彼の手を感じれば、下肢に力が入る。
ファリスの手が双丘を撫で、マライカは腰を振ってこの先を強請る。しかし、マライカの望んだものは与えられなかった。
「マライカ、お前の両親は無事だ」
ファリスのくぐもった声が耳孔に届く。誘われた声に従って視線を斜めへと逸らせば、中1階の壊された硝子越しでは縄が解かれた両親が抱き合って喜んでいる姿が見えた。
驚くことに、ダールとヴァイダは両親の代わりに縄を打たれているではないか。
その背後には、筋肉質な長身の男が立っていた。たしか彼はハイサムに捕らわれた当初に見かけたことがある。ファリスの隣にいた男だ。
「両親を、助けてくれたの?」
マライカは目を疑い、ファリスを見上げると、彼は苦しそうに顔を歪めている。
この表情は知っている。
ヒート状態のアルファを惑的するための強烈なマライカのフェロモンと戦っているのだ。
(――まさか)
これは自分が作り出した幻想ではなく、現実なのだろうか。ぶるりと身震いしたマライカは口を開けば、中1階からターヘルとハイサムが両手いっぱいに光り物を抱えていた。
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