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盗賊の成れの果て。***1
ⅩⅧ
ダールの宮殿に押し込み、お宝を盗み出したハイサム盗賊団の一夜が明けた。朝日が昇った今も念願だった大きな仕事を終えた彼らは、いつものように祭り騒ぎだ。薪に火を灯し、ある者は酒瓶を持ち、またある者は音楽に合わせて踊っている。
ファリスは窓に腰掛け、その光景を見下ろしながら、静かに酒を飲んでいた。
あれからどのくらい時間が経っただろうか。どうやらヘサームの王宮兵士は見事、ダールが雇ったお尋ね者や殺人者たちをことごとく捕らえたらしい。
ジェルザレード山脈麓のアジトへは数えるほどの残党しか攻めて来ず、すぐに捕らえ、処罰することに成功した。おかげで村人たちは皆無傷なままだ。見張り番が最後の兵士が去って行くのを確認したところで、こうして皆で酒を酌み交わしていた。
「珍しいな、ひと仕事終えたお前が酒場にも行かず、誰も引っかけずにここに留まるなんて」
ファリス同様に酒を持ち、背後に佇むムジーブは静かに言った。
――たしかに、今までのファリスなら大きな仕事を終えた後は特に憂さ晴らしのために夜の街へ繰り出していた。だが、今夜は誰も抱く気がない。
いや、今夜に限ってではないだろうことは十分判っている。
とにかく、アジトに戻ってからというもの、張り裂けんばかりの胸の痛みが消えない。
この胸の痛みの元凶――ファリスが抱きたいと思っているただひとりの相手は、まるで原形をとどめない水のごとく、この手をすり抜けていってしまった……。
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