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盗賊の成れの果て。***5
「ファリスさま、お逃げください! 王宮の兵士が乗り込んで来ました」
ターヘルは顔面を蒼白にして息を切らし、それでも懸命に声を出し、頭領に危険を知らせた。
その知らせに、ファリスは腰を上げた。
ムジーブの言ったとおり。この結果には何の驚きもない。
王宮の兵士がここまでやって来た今、ハイサムだけがただで済むとは思えなかった。
なにせスーリー砂漠よりダールの敵を討ち取ったのは王宮の兵、王の右腕ヘサームの隊だ。ヘサームとは、過去では共に戦場を駆け抜けた相手だ。彼が何を考え、行動するのかはもうとっくにお見通しだ。そしてそれはファリスの隊に所属していたムジーブも同じだ。
王宮の兵士である彼らが殺し屋たちをことごとく捕らえた後、兵の体勢を整えてふたたびやって来るのは目に見えていた。争い事を嫌う王が腰を上げた今、彼の膝元でくすぶっているハイサムという埃もまた、排除する気なのだ。
「ターヘル、下がっていろ」
「ファリスさま……」
ファリスはターヘルを押しやると、ムジーブと共に外へ出た。
「だめだ、数が多すぎる!!」
ハイサムの仲間はジャンビーアを片手に振るうが、ヘサームは容易く受け流し、刃向かう相手の喉元に切っ先を突きつける。
ヘサームのすぐ背後には、数えきれないほどの兵士が続く。
流石は王宮の兵士。
その兵力はこちらの倍以上だ。
「ファリス、どうするつもりだ」
ムジーブの問いに、しかしファリスは答えず、そのまま兵を束ねる長身の男を見定める。
流石は王の右腕。約9年ぶりに向き合うが、ヘサームの腕は鈍っていない。
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