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盗賊の成れの果て。***6

 いくら一般的な訓練を受けていない者たちを相手にしたとはいえ、数時間前は何人もの人間を死に追いやった殺人者やお尋ね者相手に剣を振るった。それでも彼が掠り傷程度でこの場にいる。ヘサームの力量は計り知れない。並大抵の者が敵う相手ではないのだ。 「ファリス・フラウ! 王の命により貴様を捕らえる! 抵抗する者は構わず切り捨てよ!」  威厳に満ちた低音が空間に響いた。  その声を耳にするだけでも迫力がある。相手によっては腰を抜かしてしまうだろう。  それでも、ハイサムに臆病者はいなかった。それどころか村人たちでさえも鍬や斧を持ち、家々から出てくる始末だ。ここの民は皆、それほどまでに王を恨んでいるのだ。  どんな相手にも怯むことなく立ち向かう彼らの勇ましい姿には、ファリスも苦笑してしまう。 「今さら王が何をするというんじゃ! 出て行け!」 「病に罹っただけのわしらから家を奪った王に従うはずなかろう!」 「そうじゃそうじゃ! 王も手下も、ここから出て行け!!」  民は声を荒げ、その目に怒りを宿す。虐げられた出来事は過去ではなく今も尚、彼らの心に深く刻まれ、続いている。  ファリスは目を閉じ、民たちの苦しみを受け止める。  果たして王はこの民たちの声を聞き入れる器があるだろうか。 「ファリス様、お逃げください!」  仲間のひとりが逃亡を促す。  しかし、ファリスは逃げるつもりは毛頭なかった。 「いや、その必要はない。皆、ジャンビーアを収めよ! 武器を捨てよ! お前たちは手を出すな!」

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