「おまえと、繋がりたい」 　耳元で囁くと腕の中の体が小さく震えたが、嫌がってももう放してやれる余裕はなかった。 　もっと深く繋がって、二度と離れないと確信したい。自分のものになってくれれば何よりも慈しんで、この生涯を賭けて守ると誓おう。 　急く気持ちを抑えて緊張している体をそっと横たえ、スラリとした両脚を救い上げるように持ち上げた。恵は恥じらって両腕で顔を覆う。 　彼を傷付けないための潤滑剤などを用意していなかったことを悔やんだが、それを理由に直接彼を味わえることに、むしろ胸の高鳴りを覚える。 　これから繋がる薄桃色の秘所に唇を寄せると、恵は喉の奥で微かに声を上げ脚を閉じようとした。右手で熱を持ったままの初々しい果実をおもむろに包み、上下に扱いてやると声に甘さが滲み始める。 「あ、ぁ……ん、いや……っ」 　白い肌もほんのりと熱を帯び、桃色に色付いてくる。 　いつも清楚で、悪くすると気取ったイメージすらある恵が、身をよじって快感に耐える姿は黒河の所有欲をさらに刺激する。 　じっくりとほぐし、こじ開けたその部分に細心の繊細さを持って指を差し入れると、恵は腕を解き、不安げな瞳を黒河に向けてきた。 「痛いか」 　首が横に振られる。差し伸べられた手をしっかり握ってやると、瞳の中の不安の色が消えた。 「大丈夫だ」 　微かに顎が引かれ、口元に微笑が浮かぶ。怖いだろうに必死で耐えているのが愛しくて、身を起こしその唇に口付ける。舌を差し入れながら、蕾を犯した指をゆっくりと動かしてみた。 「ん……っ」 　恵はキスの合間に息をつきながら、挿入した黒河の指を無意識にか締め付けてくる。たまらない。 　求めるように蜜をこぼす甘い果実を慰めてやりながら、自身の欲望を指の代わりにあてがう。頑なに閉じていた可憐な蕾は指を受け入れるのがせいぜいで、おもむろに腰を進めようとすると跳ね返される抵抗感があった。 「あぁ……っ」 　少し強引に先端を挿入すると、耐えられなくなったのか恵がつらそうな声を上げた。 　これ以上は無理だ、そう判断し引こうとしたとき、 「い、いやだ……っ」 　激しく首が振られた。 「だい、じょうぶだから、続けて……」 　伸ばした手で黒河の腕をしっかり掴み、恵は訴える。 「無理するな」 「いや、今……今して。僕を、」 　自由にして、とわななく唇から言葉が漏れた。 　繋がることで自由になれるのは、きっと恵だけではない。おそらく、黒河もだ。自分を縛り付けていた過去から、誰も愛することのできない空虚な砂漠から、今すぐ解き放ってほしい。 　ゆっくりと腰を進めると、恵が細く泣き声を漏らした。少しでも痛みを紛らわせてやりたくて、萎えてしまっていた中心を扱くと、可憐なそこは素直に熱を帯びてくる。 「あ……あぁ、ん……ダメ……」 　洩れる声に甘さが満ち、黒河の官能に直接訴えかける。締め付けられる快感に眩暈すらしそうで、自分でもどうしようもなく抽挿が速まってしまう。 「やっ、いや……やぁ……！」 　蜜で濡れる先端を擦ってやると苦痛よりも悦びが勝った声を上げ、身悶えた恵は黒河の手の中に聖らかな欲望を解放した。 　煽られ、絞り上げられて、黒河の絶頂感も急速に高まる。官能の余韻に震えている体を抱き締め優しく揺さぶって、彼の中にありったけの想いを注ぎ込む。 　共に極めることには、これほどに深い意味があるのだと初めて知った。それは決して肉体的欲求の解消ではない。 　聖なる誓いと約束なのだ。 「悪いことのはず、ないよね……」 　黒河の首に細い腕を回し引き寄せ、引いていく快感の波に浸りながら恵がつぶやく。 「こんな、きれいな気持ちが……大事な気持ちが、悪いことのはず、ないよね？」 　しっかりと頷いてやると、恵はふっと安堵の微笑を浮かべ黒河の指をそっと握った。 「もう一度、聞いて」 　もう迷いの欠片もない透き通った瞳が、黒河をまっすぐ見上げ訴えてくる。 「最初に聞いたこと、もう一度聞いて」 　月だけが見ていた２人の再会。あのとき仮面の笑顔で嘘をついた青年は、今はもうどこにもいない。 「おまえは、幸せか？」 「幸せだよ。……あなたは？」 「ああ。俺もだ」 　微笑が口元を飾り、恵は身を起こして黒河に触れるだけのキスをする。美しい瞳が一瞬伏せられ、離れた紅い唇が微かな声ですばやく何かを唱えた。 『主よ、この人を僕に与えてくださって、感謝します』 　赦しを請うでも懺悔でもなく、それは心からの感謝の祈りだった。