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第15話
2ー3 恩返しですか?
「女神の加護だと?」
俺が問うと美少女は頷いた。
「もちろんです」
ということは、だ。
俺は、思考を整理してみた。
俺は、お袋の手でルージナルスに送り込まれたらしい。
転移したところでいきなり断罪され、そこで無理やりキスされて妊娠。
それらは、すべてが女神の加護とやらのせいってことか?
「いや、いや、いや、ないでしょ?」
俺は、手をひらひらと振った。
「ないって」
「もうっ!」
美少女がふるふると頭を振った。
「なんでわかってくれないんですかっ!ここ、ルージナルスにおいては女神の意志は、絶対なんですっ!」
はぁ?
俺は、怒りがマックスまで達して爆発するのを感じていた。
「何が!女神だっつうの!俺は、認めねぇし!例え女神が認めようとも、俺は、認めねぇからなっ!」
「しかし」
美少女がため息を漏らした。
「認めると認めないとに関係なく、あなたは、勇者の母となる運命にあるのです」
運命、だと?
俺は、自分の腹に手を置いた。
どくん、どくん。
小さな弱々しい鼓動が手のひらを通じて微かに伝わってくる。
勇者、だって?
「あのさ、俺がこの子を産まなかったらどうなるんだ?」
「それは、あまり考えたくはないのですが」
美少女は表情を曇らせた。
「その場合は、このルージナルスの崩壊。つまり、この世界が滅ぶということです」
「世界が滅ぶ?」
「そうです」
美少女が俺の手をとった。
その瞬間。
考えることもできないぐらいの大量の情報が俺の中へと流れ込んでくるのを感じて俺は、少女の手を振り払った。
なんだ、これは?
ほんの一瞬のことだったが、俺の中に何千、何万、何億もの生命の記憶が存在した。
いっぱいの命。
そして、いっぱいの死。
これが、女神の世界?
こんなこと有難いことだ。
こんなこと。
「これらの生命がすべて失われるかどうかの選択が今、あなたには委ねられているのです」
美少女が潤んだ瞳で俺を見つめていた。
「どうか、このルージナルスを、世界を救ってください。お願いします、セツさん」
「それは・・」
俺は、言い淀んだ。
いったいどうすればいいってんだよ?
ふと、俺の脳裏に浮かんできたのは、ロイのことだった。
俺を助けてくれた。
いや、いろいろされちゃった訳だけど、それは、ちょっと置いておいて。
ルージナルス、つまり、この世界が滅びるってことは、ロイも死んじゃうってことだよな?
それも、俺のせいで。
それって、命を救ってもらったのに、あまりにも恩知らずなんじゃね?
うん。
俺は、ロイのためだけにでもこの世界 ルージナルスを救うべきなのかもしれない。
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