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第20話

 2ー8 スマホになっちゃいました!  フローディアは、遠浅にひいている俺を無視して盛り上がっていた。  「セツさんには、聖母のスキルを付与しますね」  なんですか、それ?  目で問いかけている俺にフローディアは、答えた。  「セツさんの産むこどもは、産まれながらに能力が強化されます。それに、セツさんは、普通の約5倍、妊娠しやすくします」  なんじゃ、そりゃ!  俺は、叫んだ。  「そんな力、いらねぇし!ってか、なんで俺が当然のように魔王の母になってんだよ?」  「だって」  フローディアが俺を上目使いで見つめた。  「セツさんしかいないんですよ?聖女に対抗できる人」  なんだよ、何を俺が聖女に対抗するってんだよ?  フローディアは、俺の手をがしっと握りしめた。  「だから!お願いします!聖母になってこの世界を救ってください!」  マジでかよ?  「それは、お断りします」  俺は、きっぱりとお返事させてもらった。  だが、諦めの悪い女神は、俺を避難するような目をした。  「今!たった今、約束したじゃないですか!世界を救ってくれるって、言いましたよね、セツさん。約束を破るんですか?そんなことするなら、私もセツさんの無事を約束をすることはできかねますよ?」  「脅迫するのか?女神のくせに」  「する気ですよ!」  フローディアは、まるで美少女ヤクザにジョブチェンジしたかのような鋭い眼差しで俺を見つめた。  「この女神相手に約束をほごにするとか、あり得ないです!そんなことする人がいたら、裸で飢えたオークの巣に放り込んで生きたまま地獄をみせてやりますから!」  俺の全身が硬直し、自然と体が震えてくる。  「いや、だ・・もう、オークの巣は勘弁して」  「なら、わかっていますよね?セツさん」  フローディアがにんまりと微笑んだ。  こわっ!  女神って、こわっ!  「あなたには、痛み耐性と、回避機能と、魅了のスキルをすでに付与していますからぁ」  フローディアが顎に指先をあててかわいらしく考えているのを俺は、虚ろな目をして見つめていた。  「後は、生活魔法と、回復魔法、それに他者の力を増幅するスキルも付与しますね。それからぁ」  「あの、俺自身の戦う力ってないんですか?」  俺が問うとフローディアは、即答した。  「あなたは、戦わずして勝つタイプですから」  なんでだっちゅうの!  フローディアは、俺の抗議の目を気にすることもなく続けた。  「そうだ、産まれてくる子供たちのために豊かな暮らしができるようにしとかないとね。錬金術のスキルと、それと産業スキルもいろいろ入れときますね」  なんじゃ、そりゃ?  俺は、福袋かなんかかっちゅうの!  「もういい」  俺は、すっかりやけになっていた。  「そんなにスキル与えなくっても、あんたがついてくりゃいいんじゃね?」  「セツさん・・」  フローディアが俺をじっと見つめた。  あれ?  俺たちは、じっと見つめあっていた。  マジ?  俺、もしかして女神の怒りをかっちゃったのか?  もし、そうなら、オークだけはかんべんしてぇっ!  俺がびくびくしているとフローディアが俺の手をとり叫んだ。  「それ、いいかも!」  はい?  フローディアが突然、姿を消したかと思うとその場に一台のスマホが浮いていた。  その画面にはフローディアの姿があった。  「これなら目立たずに常にセツさんのお側にいて力になることができますね。ナイスアイディアです!」  スマホ型女神様ですか?  マジで?  俺は、スマホに手を伸ばした。  「大事に使ってくださいね、セツさん」  フローディアが笑顔で俺に言った。  「おそらく、このスマホがあれば世界を手に入れられますから」  どや顔の女神を見つめて、俺は、深いため息をついた。  俺、どうなっちゃうわけ?  

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