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第22話

 3ー2 犯人は、お前か!  俺が俯いているとごそごそと人を掻き分けるようにしてあの小男がはい依ってきた。  「どうしたんだ?あんた、顔色が悪いぞ?」  「べ、別に」  俺は、ぷいっとそっぽを向いた。  「あんたには、関係ないだろ」  「冷たいこというなよ。同じ境遇にある仲間じゃないか」  俺は、小男をじっと見下ろした。  若いんだか、年寄りなんだかわからない。  小男は、にやにや笑って俺のことをじろじろと無遠慮に見つめた。  「俺は、ドワーフのクーランドっていうんだ。よろしくな。あんたは?」  「俺は」  俺は、嫌々答えた。  「中田 セツ」  「ナカタセツ」  クーランドは、妙な表情をした。  「きいたことない。奇妙な名前だな」  「そうかな」  俺は、つんとそっぽを向いた。  「俺のいたとこじゃ、よくある名前だけど」  「そうなのか?」  クーランドは、キラキラした瞳で俺を見上げてきた。  「どこから来たんだ?北の国からか?」  「北の国?」  俺は、こいつは見た目よりずっと幼いような気がしていた。  「なんで?」  「だって、北の国には抜けるように色白のお姫様がいるって。あんた、すごい美人だし」  はい?  俺は、ため息をついた。  「どうせなら、もっと男らしい形容詞で誉められたいもんだな」  そうなら、俺も、こんな目にはあってないだろうからな。  俺は、もう一度深いため息をついて、馬車の天井を見上げた。  もし、俺がもっと男らしければロイも俺を売ったりしなかったのかな?  「それ、すごいな、ナカタセツ」  「セツ、だ。それって?」  俺が尋ねると、クーランドは、俺の胸元のペンダントを指した。  「妖精に飼われてるなんてすごい」  「いや、これは、妖精なんかじゃねぇし、俺は、こいつに飼われているわけでもないし」  俺が答えるとクーランドは、おかしな顔をした。  「でも、あんたを奴隷商に売ってたじゃないか。その妖精が」  マジか?  いや。  俺は、頭を振った。  いくらなんでも、そんなことは。  一瞬、間をおいてから、俺は、ペンダントを握りしめぶんぶんと振り回した。  「おい!出てこい!この性悪女神が!ネタは上がってるんだぞ!」  そうだった。  こいつは、そんなことやりかねない奴だった!    

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