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第23話
3ー3 鉄拳制裁ですか?
「で?なんで?」
「なんでって」
馬車の荷台の上空に浮かんでいるフローディアが横を向いてとぼけようとしているのを俺は、じっと冷たい眼差しで見つめていた。
「ただ、その、私たちお金がまったくないでしょ?だから、旅費もなくって。また、野宿とかしたらセツさんの体にもよくないし。それでどうしようかって悩んでいたらちょうど親切な商人が通りかかって。あなたを高額で買い取ってくださるっておっしゃったので、つい」
「つい?」
俺は、にっこりと微笑んだ。
「で?俺は、いくらで売れたんだ?フローディア」
「ええっと」
フローディアがにぱっと笑った。
「3,000ジーズです」
「マジかよ!3,000ジーズっていったら王都に豪邸がかえるぞ」
横からクーランドが口を挟んだ。
俺は、フローディアに尋ねた。
「金は?」
俺は、フローディアに向かって手を伸ばした。
「金を出せ!」
「いつまでもあると思うな、女神の加護と金」
フローディアがぼそっと答えたので俺は、もう一度低い声を出した。
「金を出せ」
「だから、金は、ないって」
開き直ったフローディアが答えた。
「あんなはした金、一瞬で消えちゃったし」
「3,000ジーズがはした金?」
クーランドが口笛を吹いた。
「あんたら、すごいな」
「ええ、レディは、宵越しの金は持たないのよ、坊や」
クーランドにウインクしてるフローディアに俺は、震える声を押さえてきいた。
「で?レディは、この状況をどう納めるつもりなんだ?」
「うん?」
フローディアがかわいらしく微笑んだ。
「きっと、よいご主人様が見つかりますよ、セツさんなら」
「そうかな?」
俺が問うと、フローディアは自信満々で頷いた。
「当たり前です。あなたは、この私の加護を受けし聖母なんですからね」
「そんなもの」
俺は、渾身の右ストレートを頭上に向けて放った。
もちろん女神に俺の拳は当たらない。
でも、こいつのくれたスキルのおかげで俺の拳にも女神は当たらない。
というわけで、フローディアは、磁石がお互いを弾きあうようにしてどこかへ飛んで消え去った。
さらば、クソ女神よ。
俺は、ふんっとそっぽを向いた。
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