34 / 167
第34話
4ー6 従僕
俺が落ち着いてきたのを確認するとアザゼルさんは、デスクの上にあった鈴を鳴らした。
すると、すぐにアザゼルさんの執事であるグールドさんが現れた。
続いて入ってきたのは、グレイシアとクーランドだった。
うん。
2人とも目が真っ赤だ。
一晩、ゆっくりと一緒に過ごせたのかな。
「セツ君、君に寂しい思いをさせていることだろう。すまなかった」
アザゼルさんは俺の隣に座ると、そっと俺の手を握った。
暖かな大きな手だった。
不思議とリラックスできる。
アザゼルさんは、俺たちの前に立っている クーランドを指して俺に尋ねた。
「この子を君の従僕にということなんだが、どうするね?セツ君」
「はい?」
俺が小首を傾げているのを見てアザゼルさんが説明してくれた。
「この子はドワーフなんだが、ドワーフは、本来は従僕のような仕事には向いてない種族なんだよ。だが、グレイシアの言うことには君のご指名ということなんだが」
「はぁ・・」
俺は、アザゼルさんが言いたいことがわかって頷いた。
「あの、俺は、自分のことは自分でできるし本当はそんなの必要ないんですが、でも、もし、どうしても従僕をつけられるのならクーランドがいいです」
「ふむ」
アザゼルさんは、ちょっと笑いを堪えるような顔をして頷くと、グレイシアに告げた。
「そういうことだ。喜んでこの子を受け取ろう」
「あり、が、と、うござ、います、ワー、ウル、フ様」
ほっとした様子でグレイシアが頭を下げると、クーランドをそっと促した。
「御、主人、様に、ご挨、拶を」
「は、はいっ!」
クーランドは、ぺこりんと頭を下げた。
「よろしくお願いします、御主人様!」
「御主人様ではなく旦那様と呼んでくれないか」
アザゼルさんが口許を歪めながらちらっと俺の方を見た。
「セツ君は、今まで通りでいいからね」
ああ、そう言えば俺もクーランドと同じ奴隷なんだった!
俺は、はっと気づいた。
「俺・・知らなくって」
「今さら御主人様とか、やめてくれよ、セツ君」
アザゼルさんが口許をぴくぴく痙攣させている。
「君に冷たくあしらわれたら、私は、泣いてしまいそうだ」
ともだちにシェアしよう!