35 / 167
第35話
4ー7 黙秘します!
グレイシアは、名残惜しげにクーランドの手を握りしめてから奴隷商のもとへと帰っていった。
アザゼルさんは、俺のもとを離れてデスクへと戻るとさてっと俺とクーランドを見つめた。
「ところで」
アザゼルさんが口を開いた。
「ここでの君の役割なんだが、ね、セツ君」
その言葉に思わず緊張が走った。
俺は、どうなっちゃうんだ?
このまま、ここでアザゼルさんの愛玩奴隷にされちゃうの?
それとも?
胸が。
ばくばくしていた。
「君は、魔王たちの嫁にしようと思っていたんだが、そういうわけにはいかなくなってきた」
はい?
俺は、顔をあげてアザゼルさんを見た。
アザゼルさんが口許を歪めている。
「セツ君、君は、すでに身ごもっているね?」
「それ、は」
おれは、うつ向いてもごもごと呟いた。
「そのことは、いろいろと事情があって・・」
「グレイシアの報告によれば、君は、まだ誰にも体を許した様子はない、とのことだった」
アザゼルさんが俺を優しい瞳で見つめた。
「それは、ルシフェル様も私も同意見だ。よければ、事情とやらをきかせてもらってもいいかい?セツ君」
俺は、この期におよんでまだ、迷っていた。
全てをこの人たちに話してしまってもいいものなのかどうか。
信じてもらえないだけではなく、頭がおかしいと思われちゃうんじゃね?
迷っている俺にアザゼルさんが言った。
「安心して、セツ君。君が何を話しても私は、君のことを信じるよ」
俺は、アザゼルさんに全てを話すことにした。
お袋に、なぜか、突然に実家の再興を命じられたこと。
この世界にきたときのことは、あまりよくは覚えていないんだが、とにかく来てすぐに知らない銀髪のおっさんにキスで妊娠させられたこと。
オークの群れに放り込まれて、そこを見知らぬ剣士に救われたこと。
ただ、スマホ女神とロイのことは詳しくは話さなかった。
まあ、奴隷商に俺を売り飛ばしたのが女神だってことは話したけどな。
でも、他は、内緒にすることにした。
だって、女神の思惑を知れば俺、ほんとに魔王たちの嫁にされちゃうかもしれないし。
ともだちにシェアしよう!