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第37話
5ー1 厄介払いですか?
「ていのいい厄介払いじゃね?」
魔王候補生として辺境の地へと飛ばされることになった俺に従僕となったクーランドは、いい放った。
うん。
俺は、クーランドの方へと顔をあげると頷いた。
「確かに、ね」
そうなのかもしれない。
特に、俺の赴任することになっている辺境の領地トリムナードは、ひどいところのようだった。
まず、王都から遠く離れている。
というか、もう、はっきりいって隣国の方が近くね?
ちなみに隣国のジェイディシア公国は、豊かで友好的ないい国だということだった。
このノイスジーラ王国のあるエウリア大陸には、主に3つの大国が存在している。
1つ目がノイスジーラ王国。
もう1つが、ジェイディシア公国。
そして、最後の1つが謎の王国黄華国だった。
比較的平和な大陸であり、国々は、争うこともなく共存している。
と、俺が読んでいる本には書かれている。
だが。
俺にとっては、この世界が安全とは言いがたいのだ。
あの銀髪のおっさんのこともあるし。
とにかく、辺境の領地に引きこもるしかない。
アザゼルさんもはやく赴任して欲しそうだし、俺は、できるだけ早く準備を整えて領地へと旅立つ気でいた。
アザゼルさんがいうには、俺の赴任するトリムナードは、小さな町を中心としているがすごく範囲の広い領地らしい。
まだ前任のラミエルさんの一族も残っているらしいし、いろいろ大変そうだ。
魔王だけど普通に領主なので税金も納めなくてはいけないのだが、なんとトリムナードは、2年前から税を滞納しているらしい。
「なんのよいところもないし、住んでる住民もわずかで、周囲は、魔物の森に囲まれている辺鄙なところです」
俺にきかれてアザゼルさんの執事グールドさんは、教えてくれた。
「住人は、主に猫耳族と普通の人間たちが多かったと思いますが、どっちにしてもそんなに多くいるわけではありません」
広大な手付かずの荒れ地と森にわずかな領民。
金になるような産業もなし。
あるのは、借金だけ、か?
最悪だな。
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