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第55話

 6ー9 夜伽  この日は、最悪だった。  俺は、訓練にも集中できずロイに退いているようにと命じられる有り様だった。  そして、一日があっという間に過ぎていき。  夕食の後、あの剣士は俺にそっと囁いた。  「部屋で待ってるからな。風呂でも入ってせいぜい磨いてこいよ、セツ様」  「ああ?」  俺が睨むと、剣士はにっと笑った。  「初めて、なんだろ?」  俺は、かぁっと頭に血がのぼるのを感じていた。  「貴様!」  「逃げるんじゃねぇぞ、セツ様よぉ」  剣士は、去り際に呟いた。  「逃げたら、あのドワーフを殺すからな」  俺は、剣士の言葉に背筋が寒くなっていた。  俺が部屋へと戻ると、ワチさんが風呂の用意をしてくれていた。  あれ?  いつも朝なのに、なんで?  「私が頼んだんです、セツさん」  スマホ女神に憑依され中のグレイシアが俺に微笑んできた。  「セツさん、あの剣士のところに行くんでしょ?」  「ちっ!」   俺は、舌打ちした。  余計なことを!  グレイシアは、真剣な表情で俺に手を伸ばすとそっと触れてきた。  「初めてって大事ですからね。もし、初めてが印象悪かったら後々に影響しますから」  はい?  俺は、ぎろっとグレイシアを睨み付けた。  そんなの最悪に決まってるじゃねぇか!  最悪だよ!  最悪!  俺は、無言で服を脱ぎ捨てると風呂へと入った。  体をいつもより少し念入りに洗って湯船から出た俺は、白い夜着を着るとため息をついた。  「・・行ってくる」  俺は、部屋を出ていった。  グレイシアは、にっこりと笑った。  「がんばって、セツさん」  剣士の部屋は屋根裏の一室だった。  俺は、重い足取りで屋根裏へと続く階段を上っていった。  階段は、ぎしぎしと音をたて、俺の憂鬱さは増していった。  剣士の部屋の前に立った俺は、扉をノックした。  「入れ」  剣士の声がきこえて、俺は、ドアを開いた、  部屋は、俺とは違ってごくシンプルな、というか狭い薄暗い部屋だった。  あまり掃除も行き届いていないからか埃の臭いがしていた。  ベッドと椅子が一脚置かれただけの部屋だった。  剣士は、ベッドに横たわってにやにやしながら俺を見ていた。  「待ちかねたぞ、セツ様」  俺は、唇を噛んだ。  いつまでもその場に立ち尽くしている俺に向かって、剣士は命じた。  「さっさと服を脱いで、こっちへ来いよ、セツ様」  「くっ!」  俺は、堪えてドアの前に立ったまま服をゆっくりと脱いでいった。  

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