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第57話

 6ー11 腐ってる!  俺は、見知らぬ草原にいた。  周囲には何もなく、見渡す限り緑の広がった草原の中心に俺は、いた。  風が。  爽やかな風が吹いていて。  俺は、目を閉じて風を感じていた。  ・・きて・・  誰かの声が聞こえる。  起きて、セツ  「ん・・」  ゆっくりと目を開くとそこには、丸い穴が2つあった。  うん?  俺は、ぼんやりとした頭で考えていた。  ここ、どこ?  「気がつきましたか?セツさん」  ぼやっとしていた視線がはっきりすると、俺の目の前にグレイシアの顔があった。  マジかよ!  グレイシアは目を煌めかせて鼻息も荒く眠っている俺の上に覆い被さるようにして俺を見ていた。  もしかして、さっきの風は、こいつの鼻息か?  「離れろ!近いんだよ!」  俺が起き上がって両手でグレイシアを押しやると、グレイシアは、気持ち悪く体をくねらせた。  「いやん。冷たいんだからぁ」  俺は、こいつを無視してベッドから出ようとして、はっと気づいた。  俺、また、まっぱなの?  慌てて体を隠す俺にグレイシアが鼻の穴を広げて迫ってきた。  「で?どうだったんですか、セツさん」  「何がだよ?」  俺がわざときつい調子で尋ねたのに動じることなくグレイシアは、俺にきいていきた。  「決まってるじゃないですか。あの剣士とやっちゃったんですか?セツさん? 」  「なっ!」  俺は、昨夜のことを徐々に思い出してきた。  頬が熱い。  「んなわけないだろうが!」  俺は、そう叫んだ後、小声で呟いた。  「たぶん」  「マジですか?ちっ!あの剣士、マジ使えねぇ」  グレイシアが舌打ちするのを見て俺は、奴をじろりと睨み付けた。  「なんで、グレイシアに憑依してんだよ、フローディア」  「だって、この体の方が動きやすいからですよぉ。別に、セツさんたちをそっと監視なんてしてませんからね」  うろたえて早口で話すスマホ女神を俺は、じろりと睨んだ。  「どうせ、また、男風呂でも覗いてたなんだろうが!この変態女神が!」  「またまた、そんなことしませんってば、信じてくれますよね?セツさん」  目をうるうるさせているグレイシアを見て、ぷいっと横を向いた。  ほんとに、この腐れ女神が!  

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