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第59話
6ー13 昔の話をしよう。
俺のため、ですと?
ハトマメな表情を浮かべている俺にクーランドが話してくれた。
「あんたをあいつが昨日の夜、抱いたんだろ?それを知ったあの連中が、決闘を挑んだんだよ」
クーランドがけけっと笑った。
「ほんとは、連中からすればあのおっさんのリンチみたいなもんだったんだろ?だけど、蓋を開けたら、これ、だ」
マジでかよ?
俺は、睨みあっている2人を見つめていた。
クーランドが声をあげた。
「剣士が動いた!これで決まるぞ!」
キィンっ、という澄んだ金属音が響き渡ってロイが手にしていた訓練用の剣が宙に飛んだ。
ロイは、信じられないというように自分の手を見ていたが、やがて、その場に座り込んだ。
「参った。まさか、お前がここにいるとはな」
ロイは、噛み締めるようにその名を呼んだ。
「剣聖 アルバート・グレイアム」
「ああ?」
剣士がよいしょっと剣を大地に突き刺した。
「昔の名前だよ」
ふと、こっちを見た剣士と目があって、俺は、身を縮めた。
なんか、やばい?
「おい!そこのガキ!こっちこいよ、話がある」
「は、はいっ!」
剣士は、俺を連れてみんなから少し離れた木陰へと移動した。
俺たちは、そこにある大きな木の根元へと並んで座った。
しばらく、俺たちは、どちらも黙っていた。
小春日和の暖かな日差しが差し込んでいて、遠くに近くに小鳥が囀ずっているのがきこえていた。
もうすぐ。
春がくる。
それまでには領地へと向かわなくてはならない。
俺の腹の子は、どんどん成長していくのだし、落ち着いて出産に望むには早めに領地へと入って環境を整えなくてはならない。
「お前、異世界から来たんだな」
剣士が口を開いたので、俺は応じた。
「ああ」
「その・・クレア、いや、お前のお袋さんは、元気なのか?」
俺は、こくりと頷いた。
まさか、こいつがお袋の兄貴だたとはな。
俺は、じっとおっさん剣士の横顔を見つめた。
うん。
そう思えば、お袋にそっくりだし。
「あんた、お袋の兄ちゃん、なのか?」
「ああ」
おっさん剣士がぼそぼそと呟いた。
「かつては、そうだった」
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