61 / 167
第61話
7ー1 恋人ですか?
謎の剣士の正体が俺の実のおじさんであるアルバート・グレイアムだとわかってからは、午前中の鍛練の指導はアルバートがするようになっていた。
なぜか、俺とクーランドだけでなくダイナスたちや、ロイまでが加わってかなり賑やかになっていた。
「剣聖、か。道理で強いわけだ」
休憩のとき、ダイナスが俺の休んでいる側に腰を下ろすと持っていたタオルで汗を拭いながら俺に話しかけてきた。
俺は、ダイナスに尋ねた。
「剣聖って?そんなにあの人、すごい人だったの?」
「すごいも何も」
クライアムが俺とダイナスの間に割り込んできた。
「あの人は、生きた伝説だ」
「マジで?」
俺は、驚きが隠せなかった。
あの人が俺のおじだっただけでもびっくりなのに、生きた伝説って。
俺に向かってクライアムは、どやっと頷いた。
「なにしろ勇者だったんだしな」
「ほんとに?」
俺は、そのファンタジーなジョブに思わず食いついていた。
「じゃあ、魔王とかと戦ったりしてたわけ?」
「ああ。確か、ロイザールは、1度、あの人に倒されてるんじゃなかったっけ?」
はい?
俺は、視線でロイを探した。
ロイは、俺たちから少し離れたところにアルバートおじさんと一緒に腰かけて休んでいた。
俺は、小声でダイナスたちにきいた。
「つまり、ロイは、1度は死んで転生を果たしたってことか?」
「ああ」
ロスアンジールが俺の方へと体を寄せるとそっと囁いた。
「たぶん、2、3年前の話だが奴は、勇者に殺されそして、甦った。その時、奴の依りわらとなったのは、奴のかつての恋人だった男だったということだ」
恋人?
俺の心臓がどきん、と跳ねた。
しかも、男だったんだ?
「ロイの、その恋人って?」
「なんでも、黄華国の皇子で絶世の美姫だったらしい」
「そうなんだ」
俺は、なんだか心を打ち砕かれたような気がしていた。
なんでだよ?
おかしいな、俺。
そもそも、ロイみたいな奴に恋人がいない方がおかしいし。
まあ、それが男だったってことは、複雑だが、な。
何も、俺がショックを受けることじゃねぇし。
俺は、アルバートと並んで腰を下ろして何やら話し込んでいるロイのことをじっと見つめていた。
うん。
今、かつての敵同士が剣の鍛練を一緒にしてるわけだ。
なかなかすごいことだな。
ともだちにシェアしよう!