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第62話

 7ー2 風呂  俺は、ちらっとロイの方を伺った。  わゎっ!  俺とロイの目があって、俺は、慌てて視線をそらした。  なんだ?  このどきどきは。  変、だ。  やばい、俺、なんかの病気なのかも。  息切れ、動悸、めまい。  俺、死んじゃうのか?  「セツ!」  不意にロイに名を呼ばれて、俺は、飛び上がった。  「はいぃっ!」  「どうかしたのか?顔が真っ赤だぞ、セツ」  いつの間にか、俺の側に来て俺を見下ろしていたロイに俺は、どぎまぎしていた。  「べ、別に」  「そうなのか?」  ロイは、そっと俺の額に触れた。  俺は、びくんと、体を固くしていた。  ロイの手は、暖かくって、優しかった。  俺は、それだけで涙が出そうになっていた。  「熱は、ないな」  ロイは、俺の方へとしゃがみ込むとそっと耳元に顔を近づけて囁いた。  「無理は、するな。お前は、大事な時だ。もう、鍛練は休んだ方がいい」  「平気、だし」  俺は、素っ気なく答えるとダイナスたちに言った。  「そろそろ、休憩は終わりだろ?」  剣を持って立ち上がった俺の手をロイは引き寄せて、俺をそっと抱いた。  はい?  ロイに抱き寄せられて、俺は、その温もりを感じて、ぼうっとしてしまった。  いやいやいや。  俺、そこは、拒もうぜ!  俺は、はっとしてロイから体を離した。  ロイがくすっと笑った。  「後で話がある。お前の部屋に行く」  うん?  俺は、ロイに言われて怪訝に思っていた。  なんで、ロイが俺の部屋に?  問いたかったが、そのときにはもう、ロイは俺のもとからアルバートのもとに向かって歩きだしていた。  ただの業務連絡だよね?  俺は、頷いた。  しっかりしろよ、俺。  なんか、この世界に毒されてきてるし。  そんなんじゃ、誰にでも好きなようにされちまうぞ!  それから、俺は、いつもより熱心に鍛練に打ち込んだ。  だけど、ロイの手のひらの温もりの記憶が消えることはなかった。  鍛練の後、俺は、いつもはクーランドたちと一緒に使用人用の風呂で汗を流すことにしていた。  だけど、今日は、自分の部屋でお湯を使わせてもらうことにした。  だって、最近、ダイナスたちまで使用人用の風呂を使うようになっていたからな。  魔王は、ちゃんとした客室が用意されているというのに、わざわざ不便で混んでる使用人用の風呂を使うなんて物好きな連中だ。  

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