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第63話

 7ー3 なんでどきどきするんだよ?  俺は、部屋へと戻るとワチさんの用意してくれていた風呂に浸かって汗を流した。  本当は、生活魔法でも十分間に合うんだが、そこは、やっぱり風呂に入りたいからな。  俺は、湯船で手足を伸ばしながらほっと吐息をついた。  ロイ。  俺は、目を閉じて湯船に体を沈めた。  ロイの恋人って・・  「ぷはぁっ!」  俺は、勢いよく水面へと顔を上げてため息をついた。  ロイの恋人。  どんな人なんだろう?  きっと、すごい美人なのに違いない。  でも、そんな人がいるのに、なんで、俺のことなんかにかまってるんだ?  はやく、その人の元に戻ればいいのに、なんで、こんなところでぶらぶらしてんだか。  まあ、たぶん、今は、もう一人の女神の呪いのせいで俺以外に魔王の子供を埋める者がいなくなったんだけ?  それで、仕方なく俺にかまってんだよな?  俺は、またため息をついていた。  ロイ、なんの話があるってんだ?  俺は、さっきのロイの表情を思い出していた。  なんか、思い詰めてるみたいな真剣な顔をしてたような。  あれから、結局、俺たちはまだ二人きりで話をすることができていなかった。  なぜなら、俺たちが話をしようとするとダイナスたちが邪魔をするから。  「セツの純潔は、俺たちが守る!」  あいつらそんなことをなんかのスローガンみたいにして団結してるからな。  でも。  俺は、ふうっと吐息を漏らした。  ロイに恋人がいたのか。  絶世の美姫、だっけ?  どんな男なんだ?  俺は、ふと思っていた。  もしかして、ロイの話って、お別れの言葉を俺に伝えたいのかも。  俺がトリムナードへと旅立つ日はだんだんと近づいていた。  トリムナードは、この大陸の一番端にある領土だし、そこに行ってしまえば、もう、当分はロイとも、あの3人とも、アザゼルさんとも会えなくなる。  あ、後、考えたくもないけどエイダスとも、な。  俺は、エイダスのことをとっちめたいと思っていた。  それが剣の鍛練のやる気の7割を占めているといっても過言ではなかった。  だけど。  会いたいかと問われれば、答えはノーだった。  だって、あいつ、俺を殺す気満々だしな。  ロイともうしばらくの間、会えなくなると思うと、なぜだか、心がすきま風でも吹いているみたいな気分になった。  変だな。  俺は、首を傾げた。  俺は、女の子が好きだ。  それは、絶対に間違いなくって。  なのに。  なんで、ロイのこと考えるだけで胸がどきどき高鳴るんだ?  

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