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第64話

 7ー4 よろめきですか?  きっと、あの夜のことが原因だろう。  あの夜。  ロイと初めて出会ったときのこと。  オークの血で汚された俺は、発情してしまって。  それを静めてくれたのがロイだった。  そのせいで、俺、頭の中に変な回路ができちゃったのに違いないんだ。  快感の回路。  ロイが与えてくれた快感を再び、求めている俺がいるんだ。  俺は、男だし、ロイも男なんだし。  何も報われないし。  それに。  ロイには、恋人がいるんだから。  ただ、仕方なく俺にかまっているだけ。  なんか。  俺は、悲しくなってきていた。  なんでだっちゅうの!  「俺は、男だし!」  俺は、ばしゃばしゃっと顔を洗った。  「俺は、男なんだ!」  「そんな力説しなくったって、知ってる」  急に降ってきたその声に顔をあげるとそこにはロイの端正な顔が覗き込んでいた。  「ふぇっ?」  俺は、あたふたと体を隠すとざぶんと顎のところまでお湯の中に潜り込んだ。  「な、なんで?なんで、ロイがここにいるんだよ?」  「なんでって、会いに行くって言っただろう?」  ロイが湯船に肘をついて俺の体を見つめていた。  マジですか?  俺は、恥ずかしくって顔から火が出そうだった。  「い、いつからそこにいたんだ?」  「少し前から」  ロイがふっと微笑んだ。  「相変わらずお前は、かわいいな、セツ。何か考えているかと思ったら、赤くなったり涙ぐんでみたり、まったく、飽きないな」  「はひっ?」  俺は、びくっと体を硬直させた。  けっこう前からいてはったんですか?  「な、なんで?ノックしてくれたらよかったのに!」  「したよ。でも、返事がなかったからな」  ロイが気まずそうにそっぽを向いた。  俺、妄想中だったから?  ぜんぜん、気がつかなかったよぉっ!  とにかく早く風呂からあがって、服を着なくちゃな。  立ち上がった俺は、ふらっとよろけかた。  「危ない!」  転びかけた俺をロイが抱き留めてくれた。  「はっぁっ・・」  俺は、すぐに体勢を建て直そうとしたが、やっぱりまだふらついてしまってしっかりと立てない。  ロイは、俺の濡れた体を抱き上げるとベッドまで運んでくれた。  「大丈夫か?湯あたりしたんだな」  ロイが頬に触れてきたのが、冷たくって気持ちよくって、俺は、思わずロイの手にすり寄っていた。  「冷たい」  「すまない」  「いや、気持ちいいし」  ロイは、俺がそう言うのをきくと、急に黙り込んでいしまった。  

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