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第66話
7ー6 全てを委ねたい
「ロイ・・!」
「なんだ?」
「あの、さ・・」
俺は、ききかけて口を閉ざした。
ロイの好きな人って。
でも。
「なんでも、ない」
俺は、ふぃっと横を向いた。
こんなこと、きいてどうするってんだよ?
俺は、苦笑していた。
どうかしてるんだよ。
ロイは、最後に俺の頬をそっと撫でた。
「そろそろ、私も領地に戻らなくてはならない。贈り物は、直接トリムナードへ届けよう。セツ、お前なら、いい魔王になれることだろう」
ええっ?
気がつくと、俺は、去っていくロイの手を掴んでいた。
ロイが。
振り向いて俺を見つめる。
俺は。
「・・いかないで・・」
「セツ?」
「行かないで、ロイ」
俺は、目をぎゅっと閉じて必死にロイの腕にしがみついていた。
「ずっと、俺の側にいて」
「セツ・・」
ロイが俺の頭を軽く撫でた。
「そんなこと言われると、誤解してしまうぞ」
「いい、から」
俺は、顔がかぁっと熱くなるのを感じていた。
「誤解、してもいい、から」
「セツ」
ロイが不意に俺の体を抱き寄せて、俺の耳元で囁いた。
「愛している」
俺は、恐る恐る目を開いてロイのことを見つめた。
ロイは、その美しい唇を俺の唇へと重ねてきた。
「ふっ・・」
ロイの舌が俺の舌に絡み付き吸い上げられる。
くちゅくちゅっという淫らな音に、俺の意識が遠退いていく。
「ぁぅ・・んっ・・」
俺は、必死でただロイの腕にしがみついていた。
ロイは、そんな俺をそっとベッドへと横たわらせた。
「セツ、お前は、美しい」
はいぃっ?
ロイに見つめられて俺は、恥ずかしくて両手で体を隠そうとしたけど、その手をロイに掴まれて体の両脇へと下ろされた。
「隠すな、セツ。お前は、きれいだ」
「そんな、こと、ないし」
俺なんて、ただの普通の大学生、ただのパンピー、ただのどこにでもいるモブに過ぎない。
それに比べて、ロイ、は。
ロイは。
魔王の中の魔王。
強いし、それに、美しい。
ロイは、本当にきれいだ。
まるで、アザゼルさんが話してくれた昔話の炎竜のように、美しく、激しく、熱い。
「セツ」
ロイは、触れれば崩れて消えてしまう宝物に触れるように俺の体に優しく手を置いた。
ロイに触れられた場所が。
熱い。
「セツ・・本当に、いいのか?」
「うぅっ」
俺は、目が涙に霞んでいくのを感じた。
俺。
どうしたらいいんだ?
このまま、ロイに全てを委ねてしまいたい。
でも。
それで、いいのか、俺?
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