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第74話

 8ー6 力が欲しい!  それから。  俺たちは、変わらず毎日忙しく過ごしていた。  剣の鍛練に、座学。  そして、出発に向けて必要なものを買いそろえるためにアザゼルさんたちと街へ出ることだってあった。  みんな、俺が落ち込んでいることを気に掛けてくれていた。  だから、俺は、つとめて明るく過ごしていた。  アザゼルさんは、俺に赤い魔石の嵌め込まれた金色の美しいリングをプレゼントしてくれた。  「これは、君が独立奴隷だという証の首輪だ」  アザゼルさんは、俺のこと首にそれをつけると申し訳なさげに言った。  「これをつけていれば、君が1人でどこへ行っても拘束されたりすることはない」  そう。  俺は、奴隷だ。  ほんとは、主のために身をていして働かなくてはならない。  だが、俺は、特別に優遇されていた。  それは、世間的に見れば、俺が魔王たちの慰みものとして扱われているということなのだった。  アザゼルさんは、俺に告げた。  「本当は、こういった首輪には呪がかけられていて、外したら爆発したりするようになっているんだが、これは、そんな術はかけられてはいない」  そして、クーランド、グレイしア、それにアルバートおじさんは、俺の奴隷ということになっていた。  俺は、アザゼルさんに渡された奴隷用のブレスレットを彼らに渡して手首にはめた。  これで、俺たちの身分は保証されるのだ。  俺とアルバートおじさんは、2人で商業ギルドへと向かった。  もちろん、商業ギルドでは、俺たちを丁重に扱ってくれた。  俺は、そこでおそらく領地で必要になるだろうものをいくつか買い物した。  代金は、もちろんアザゼルさんもちだった。  アザゼルさんいわく、就任祝い、だそうだ。  俺は、金がないことは、不味いことだと気づいた。  この世界では、奴隷にとっては金は、正義だった。  なんとか、出発までにまとまった金を稼ぎたい。  俺は、帰りの馬車のなかでアルバートおじさんに相談した。  おじさんは、不承不承だったが答えた。  「あまりすすめたくはないが、冒険者ギルドに登録してみたらどうだ?」  「冒険者?」  うん。  俺は、頷いた。  それは、いいかもしれない。  「よし!出発までに、まとまった金を稼ごう!」  いつまでもアザゼルさんに抱っこにおんぶなわけにはいかないし。  それに、何より、俺たちの領地であるトリムナードには、すでに多額の借金があったし。  それに。  俺は、力を欲していた。  自分の意思を貫くために必要な力を。

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