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第92話

 10ー3 命令ですか?  俺は、旅装を解いて部屋のソファに腰かけた。  いくら魔王連合ギルドの馬車が最高でも1日ずっと座っているのは、けっこうきつい。  「すぐにお風呂の準備をいたします、セツ様」  ワチさんが部屋のティーセットを使ってお茶をいれてくれた。  俺は、それを受け取りながらワチさんに言った。  「ワチさんも、ゆっくりして」  だけど、ワチさんは、俺の言葉に微笑んだ。  「でも、仕事してる方がくつろげますから」  マジで?  ワチさんは、俺にかまわず、仕事を続けた。  俺は、ため息をついた。  俺は、これから赴くトリムナードのことを考えていた。  この分なら予定よりだいぶ速く到着できそうだ。  俺は、少しの期待と、大きな不安で胸が高鳴るのを覚えていた。  トリムナード、か。  この国の魔王領の中で1番広くて、貧しい領地。  北の端は、海へと通いていて、西は、隣国との国境。南には、ただっぴろい荒野が広がり、東には、魔物の森がある。  そのうち、人が住んでいるのは森と荒野の間にある小さな町トリムのみ。  住人の数も1000人に満たないという。  それに、前の領主である魔王の一族も住んでいるらしいしな。  その時、ノックの音がきこえてグレイシアが顔を覗かせた。  「セツ、客、が、きて、る」  客?  グレイシアが案内してきた客は、黒髪に青い瞳の美しい青年だった。  「はじめてお目にかかります」  その青年は、俺に礼をとって頭を下げた。  「ここを他の魔王が通られることは、久しぶりなものですから、ご挨拶をと思いまして」  彼は、ラミー・ララミアと名乗った。  この地を治める魔王だった。  ラミーさんは、俺に微笑みかけた。  「しかし、こんな美しいが魔王候補生だとは、驚きですね」  「はぁ」  俺とラミーさんは、二人きりで俺の部屋で夕食をとることになった。  夕食は、薫製肉を使ったシチューのコースだった。  料理は、魔王連合ギルドの料理人の料理にも負けず劣らずの美味しさだった。  俺が遠慮なくパクついているのを見て、ラミーさんは少し引いているようだった。  「あなたは、私が思っていたような人ではないようですね」  はい?  ラミーさんの言葉に俺がキョトンとしているとラミーさんが俺の頬へと手を伸ばしてきた。  そして、俺の頬に軽く、羽のように触れると優しく微笑んだ。  「ほっぺについてましたよ、セツ」  マジで?  俺は、かぁっと顔が火照るのを感じていた。  子供扱いされてるぞ、俺。  「ところで」  ラミーさんは、手に持っていたグラスをテーブルへ置くと俺をじっと凝視した。  「ギルド長、アザゼル殿から連絡を受け取っています」  「どんな?」  俺が問うとラミーさんがにっと笑った。  「ええ、大したことではないのですが」  彼は、俺の目を覗き込んだ。  「あなたをお抱きするように、と」  はいぃっ?  

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