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第101話

 10ー12 運命の地  翌朝早朝に、俺たちは、ロースさんの家を後にした。  ロースさんとの激しい情交に、俺は、まだ体が痺れていた。  動けない俺をクーランドが竜車へと運んでくれた。  クーランドは、俺に何も話さなかった。  竜車で力なく横たわる俺を膝枕して、優しく髪を撫でながら囁いた。  「俺は、何があろうともお前の一番の騎士だ。それを忘れるな」  俺は、その言葉が嬉しくて。  クーランドの膝に顔を埋めて泣いた。  それからも俺たちが旅の宿を求める先々でこんなことは続けられようとした。  どうやら、従僕たちが手はずをつけているようだった。  余計なことを!  俺は、怒っていた。  このままじゃ、俺は、トリムナードに到着するまでに何人もの魔王の子を孕ませられてしまう。  俺は、次の宿になる町で従僕であるダイさんの前に仁王立ちしていた。  「おい!あんた!」  俺は、怒りに任せて言った。  「俺は、もう、誰とも寝ないから!そのつもりでなっ!」  ダイさんは、目深にかぶったフード越しに頷いた。  それからは、俺は、平和に旅を続けることができた。  それでも、俺のスキル『ビッチ』は、トリムナードに到着する頃には、レベル60を越えていた。  マジでか?  俺は、竜車で揺られながらクーランドにもたれて目を閉じていた。  何人もの魔王たちに抱かれた俺のことをクーランドたちはどう思っているんだろうか。  汚い性奴隷だと蔑んでいるんじゃないだろうか。  そう思うと俺の閉じた目蓋の奥に熱いものが滲んできた。  だけど。  クーランドは、そっと目を閉じている俺の手を握った。  俺の頭の中にスマホ女神の声がきこえてきた。  『何が汚いか、何がきれいか、それは、人によるのですよ、セツさん』  トリムナードで俺を何が待っているのか。  俺は、怖くて。  でも、俺を優しくも見守ってくれるアルバートおじさんや、グレイシア、それにワチさん。ラクシア親子。  何より。  俺の手を握ってくれているクーランドがいた。  それに、謎の従僕たちもいる。  俺は、1人ではないのだ。  そして。  生まれてくるであろう子供だっている 。  俺は、この子のことを受け入れられるのか?  何もかもが不安ばかりだったけど、俺は、前を向いて歩いていくしかなかった。  こうして、女神の加護を受けし者。  魔王たちの聖母である俺は、運命の地、トリムナードへと到着したのだった。  

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