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第103話

 11ー2 荒れ地の魔女ですか?  「セツさん」  誰かに揺り起こされて俺が目を覚ますと、そこは、俺のよく知っている実家の近所の喫茶店だった。  あれ?  俺は、目の前に置かれたコーヒーのカップを見つめて首を傾げた。  もしかして、やっぱ、全部夢だったとか?  「ありえへんやろ、自分、ちょっとおかしいんちゃう?」  声のほうへ目をやるとそこには、小麦色の肌をした金色の髪の狐耳の美少女がいた。  はい?  俺は、ハトマメで訊ねた。  「どなたでしたっけ?」  「恐れおののくがいいわっ!我こそは、噂に名高い荒地の魔女メサイア様や!」  はい?  俺は、はぁっとため息をついた。  また、いかがわしいものが登場しましたよ、明智さん。  「なんや、その不満そうな顔は?」  メサイアは、俺に訊ねた。  俺は、不機嫌さを隠すことなく告げた。  「もう、女神やらなんやらはお断りだ!」  俺が席を立とうとすると、メサイアは、慌てて俺の手にすがり付いてきた。  「ちょっ!待ってえや、聖母はん!」  「その名で呼ぶな!」  俺は、メサイアを振り払った。  「なんの用だ?どうせ、ろくでもない話なんだろうが、5分だけきいてやる。早く言え!」  メサイアは、俺に話し始めた。  「うちは、トリムナードの荒れ地に住むクダギツネの一族の頭領なんやけどな、この度、ありがたくもあんたさんの夢枕にたってやることにしたんや」  「30秒経過」  俺は、店の壁にかかっている時計を見ていた。  「後4分ちょっとだぞ」  「わぁん!!すんません!聖母様、どうか、うちらを助けてんか!」  メサイアが泣きながら俺に頭を下げた。  「つまり」  俺は、メサイアの話をきいて奴に問いかけた。  「トリムの町の連中にお前たちの一族が蹂躙されているからなんとかしてほしい、と?」  「そうです」  メサイアががっくりと項垂れた。  俺は、唸った。  トリムの連中がこの魔物の一族を奴隷として狩っているというのだが、初耳だった。  でも、奴らだって食うのに困ってるわけだしな。  俺は、ため息をついた。  「これから、お前たちの一族に手を出す者がないようにして、俺たちになんのいいことがあるわけだ?」  「それは」  メサイアが胸を張った。  「この荒地の魔女メサイア様が、あんたさんの使い魔になったる!」  はい?  俺は、キョトンだった。  「使い魔なら、もう必要ないし、お前みたいな厄介そうなやから、いらねぇし」  「そんなぁっ!」  メサイアが泣きついてきた。  「うち、なんでも使えるし!ええ仕事するし!お願いやから、うちらを見捨てんといて!」  

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